CHAT理論、ご存知でしょうか。
クリーニングにおいて、汚れを除くための方法論をシンプルにまとめたのが、CHAT理論です。
C Chemical
H Heat
A Agitation
T Time
その頭文字を取って、「チャット」と読ませます。
ケミカルは化学的アプローチ。洗剤です。ヒートは熱。タイムは時間。
...アジテーションって何でしょう?
2020年9月現在、検索すると1位に出てくるのが日本経済新聞の2019年11月19日の記事です。「方法」と訳されてます。
以下、「摩擦」「擦る」「物理力」と訳されているサイト。
CHATを基本にクリーニングを学ぶ国際認定IICRCで6つの資格(2020年現在)を持つ社長・中島は言います。
「どれもチガウ。しっくり訳せていない。」と。
門前の小僧としてIICRCのCCTとOCTの2資格を得ている私も、そう思います。
なので、今回はCHATのA、アジテーションの解説です。
小学校で食塩やミョウバンを水に溶かしてみよう...なるべくたくさん溶かすには?という実験、どなたもされたことがあると思います。
CHAT理論、実は日本人なら誰でも習う、ミョウバンの水溶液を作る実験と同じことを言っているのです。
温めて、グルグルかき回して...もうすこし時間を掛けてやってみよう。ほーら、冷水に放り込んだだけより、たくさんの量を溶かせたね!ということです。
この、「グルグルかき回す」がズバリ、 Agitation です。
正しい解釈は「撹拌」。ようは、汚れと混ぜ合わすという意味です。
CHAT理論は、ぜーんぶやったら最強だ!最強万歳!という考え方ではありません。
現場の状況から判断し、要素を補い合わせ、そしてベストの結果を導き出せ!という考え方なのです。ここ、大部分の人が誤解するところです。
例えば、時間に制約がある、熱を加えられない材質、薬品に弱い部材...さまざまな現場がありますよね。「押して駄目なら引いてみな」の要領で、熱がダメなら時間を足しな、のようなことです。
つまりCHAT理論はそれ自体、初歩的かつシンプルな思考です。プロフェッショナル感を出して、もったいぶるほどの難しいものではない。
だから、知識があっても、さほど現場対応力が上がるわけではありません。そんなの知ってても、目の前の困った汚れは落ちない。
重要なのは、どの現場にどの要素をどのくらい?という判断です。
ここで、摩擦・擦る・物理力といったゴシゴシ路線で解釈した人たちの誤りが明らかになります。
CHAT理論を正しく解釈するならば、ゴシゴシこすりまくらなくとも、汚れが落ちるということです。
力を入れてガッシガッシ擦っている時点で、汚れに対してケミカルが効いていない...つまり正確に判断できていない...と、証明しているようなものです。
炊き込みご飯のシイタケやささがきごぼうをご飯にまんべんなく合わせる、なみなみ入ったコーヒーにミルクを溶かし込む、クレンジングを頬や瞼に馴染ませる、育毛剤を頭皮に揉み込む...そのような動作がアジテーションです。
いづれも、ゴシゴシ、ガシガシやったら台無しです。
かけ離れた動作をすれば、目的とは違う結果に至ります。クリーニングで言えば、「汚れは落ちてない。擦っただけ。」という結果です。
生活・家事・お掃除関連のコラムニスト・アドバイザー・ライター・ジャーナリスト・芸人のような方々がCHATをハテナなニュアンスで語るのは仕方がないことです。体系的な学習と現場対応経験が無い中、他から情報を得ようにも正答が無いんですもの。
しかし一方、現場を請ける私たちは「理論を正しく行使し、求める結果を出す」ことが仕事です。Agitationをゴシゴシ系と解釈している清掃業者は、実害が大きい。目的を達せず出費するリスクが高いわけです。候補から外す方が宜しいです。