マンションの玄関、大理石タイルの研磨。
マーブル状の濃いグレーに、白いクラック(ひび割れ)模様。シャローアッシュという種類の大理石です。
大理石といえば「白っぽい淡い色」のイメージがありますが、黒・深い灰色・焦げ茶色など「濃色」も多いんです。
なぜ同じ大理石なのに、こんなにも色が違うのか...それは、組成が微妙に違うんです。
ロマンチックかつ雑に説明しますと...大理石は、太古の海の砂や地べたの土がマグマの熱で変性した化石...その中にいた生物もまぜこぜに...。
どのエリアで、どんなふうに出来てきたか。その違いが色柄のバリエーションになります。種類によって鉄分などミネラル含有量が違ったり、硬さが違ったり、いろいろ性格があるんですね。
もっとロマンチックに語っていってもいいんですが、サクっと現実に引き戻しますね!
濃い色の大理石は、研磨が難しい。のです!
磨いても磨いてもボンヤリ気味で、光沢が上がってきにくいのです。
特に、家庭用電源を使用して現場で石材研磨を行う私どものような業者にとっては難問です。
したがって、ウォッシュテックでは「他の業者に相談したけど断られた」との経過を添えてご相談いただくことが多いです。
今回のシャローアッシュネロの玄関タイル。
玄関のタタキ真ん中あたり、「土足で歩くところ」がパサパサに!
照明が白くぼやけて、本来のグレーやクラック模様が見えてきません。
ズームしますと、こんな感じです。
細かな擦り傷の凹凸が、照明の光を乱反射させる。結果、肉眼ではボヤけて白っぽく見えているということです。
このくすみは、汚れが付着しているのではないということです。
大理石の硬さは、爪と同じくらいです。
大人が靴の裏に砂粒をくっつけてシャーっと斜めにぶっこんできて、ピタッと止まる...それが玄関でおこなう日常動作です。実はその物理的衝撃は、大理石にとってかなりツラいんですね。
その傷と汚れをきれいにされたい思いから、住まい用洗剤で拭き掃除をされて、あれ?きれいにならない?もっと拭かなくちゃ...もっともっと...という頑張りからできた洗剤ダメージも見られます。
▼大理石のレストレーション完了!
周辺部分との差異が無くなり、なめらかかつ鮮明に照明を跳ね返しています。
シャローアッシュネロの灰色って、その中にも濃淡があって素敵でしょう!これね、実は化石なんですよ!なーんて自慢できる状態に回復できました。
ビフォアと同じ部分を接写で。
つるっ!
天井のライトばかりか、リビングからの光も跳ね返しています。
画面右あたりに金茶の粒が入っているのが分かりますかね。こういうのが混じってるのが天然の石の面白さかと思います。もちろん、指で触ってみても平滑で違和感ありません。
大理石研磨を施すと、なんとも清潔な印象です。大理石は、清潔あってこその高級感だと思います。
上にも書いた通り、濃い灰色のシャローアッシュネロや、漆黒の大理石ネグロマルキーナは、現場での研磨がとても難しい石です。
従って、研磨を問い合わせると、ほぼ「できません」と断られるかと思います。それでもと言えば「コーティング剤を上塗りして光沢感を出します」と提案する業者がとても多いです。
研磨のみで光沢を回復することができれば、そんな提案は不要だ。その一言です。
社長・中島のゴリラ級の筋肉あればこその強気の発言です。
マニキュアのような膜を造るタイプのコーティング剤を塗布すれば、数か月から数年はピッカピカかもしれません。しかし、しょせんコーティング剤は樹脂。いづれ脆く崩れて脱落したり変色したり、とてもダサな結果に至ります。
そして、大理石は空気や湿気から長期に亘り隠蔽されると、化石からパッサパサの単なるカルシウムに戻ってしまうのです。魔法がとけたみたいに。
そうなると、いくら研磨してもツルっと戻ることはありません。石が死に至るハイリスクなコーティングは避けてください。
繰り返しになりますが、大理石は悠久の時を経て、わたしのおうちに巡り来た化石です。
単なる靴脱ぎ場になっている玄関も多いでしょう。日常の同線の一部、見るのもほんの一瞬かもしれません。
くすんでいては、ただの足元に敷いてある石と思えてくるでしょう。
しかし胡麻化しなく正しく磨けば、うっとり見続けていられるくらいの迫力。それが大理石です。
マルロやブタンのパンプスを置いたとして、似合う。そのような玄関は大理石が貼られているからこそ実現できると思うのです。クッションフロアや塩ビタイルの玄関では、どうにも無理なんです。
一番よそいきの靴を玄関の上がり框の手前あたりに置いてチェック。なんか気分が下げ下げ...と思ったら研磨どきかと思います。よろしくお願いします。