石の浴室のレストレーション。
大理石の壁面です。
窓から差し込む光に透けると、パサパサと粉っぽく濁っている様子がよく分かります。
ちょっと飛び散りが付いちゃってから撮影したので結露しているように見えますが、飛び散りの他の箇所は全体的にドライ。触るとカサカサしています。
▼回復型クリーニング後の大理石の壁。
ダイヤモンドディスクで研磨し、新たな面を繰り出して滑らかに整えたところです。触るとキュッ...でも、スベッ。ニュートラルな大理石の感触。ヒヤーっとこないところが、陶磁器タイルとは違うのです。まさに高級。
壁の大理石タイルに、窓の形がくっきり映り込むようになりました。研磨によって光沢が取り戻せたので、陽の光をまっすぐに跳ね返します。
レストレーション後にいつも思うことなのですが、浴室は本来の質感を取り戻すと、とても明るく見えます。照明も太陽光も、まっすぐに映り込むためかと思います。
逆に言えば、汚れに覆われたバスルームは、暗いです。雰囲気や感覚ではありません。光がぼやけて小さく映るので、物理的に暗くなりがちです。
浴室の壁は、樹脂製パネルのユニット浴室でもくすみます。
こんな壁も、あんな壁も。分け隔てなく。水道水に含まれるミネラル(カルシウム、マグネシウム、シリカなど)が固着しているので平等であります。
しかし、大理石の壁のくすみ方は、ユニット浴室のくすみ方よりも更に複雑です。
浴室用の洗剤を使うことによってできた「くすみ」です。
市販の浴室用洗剤には、金属封鎖剤という添加物が含まれています。水道水の中に溶け込んでいるミネラル(金属)と洗浄成分が打ち消しあわないために必要なものです。
金属を封鎖するというのはですね...。洗剤が撒かれました!その瞬間、水道水の中のミネラルをガブリとくわえ込む!封鎖完了!ミネラル(主にカルシウム)、コロしました!そして効き始める洗浄成分。...いわば先鋒。ものすごい反応が早いんです。
金属封鎖剤は、ものの数秒でカルシウムと反応してしまいます。
樹脂製であれば、問題ありません。でも、大理石はカルシウムで出来ています。
水道水に溶けているカルシウムよりも先に、大理石のカルシウムに反応してしまうのです。水道水よりも大理石のカルシウムの方が圧倒的質量ですから、金属封鎖剤とすれば「オリャー!(腕まくり)」と掛かるのも当然かも...。
光沢がある大理石は、触れると一瞬で表面が壊れてしまいます。もちろん、1回や数回では気づかないレベルです。洗剤をシュッシュシュッシュ撒くのを数か月、数年と続けていると、肉眼でもパサッと見えてきます。パサッとした質感に見えるということは、すりガラスと同じで、凹凸なんです。見た目だけでなく、触っても変質の変化が分かるかと思います。
これが、大理石のお風呂の「あれ?ツルツル光沢が無くなった...汚れ?高級感、どこ行った?」現象のメカニズムです。
もはや表面が凹凸に崩れている状態なので、汚れが引っ掛かりやすく取れにくくなり、更に洗剤を撒いて掃除をすることになり、加速度的に変質が進む例も多いです。
変質レベルがものすごく進むと、ダメージが研磨では対応できない深さになりますので、回復度合いが低くなります。
もし、石の浴室、お掃除してもしてもパサパサだ...とお悩みで検索されている方がおられましたら、お声掛け下さい。
ハウスクリーニング業者でも、このメカニズムを知ったうえで結果を出せる人はきわめて少ないです。
金属封鎖剤が入っていない洗剤がそもそもとても珍しいのですから仕方ないことなんです。でも、知っているのと知らないのでは、着地点が全然違ってくると思います。なので、書いてみました!