ユニットバスの扉。カビがダラーッ。隙間に汚れがビッチリ。
これは・・・カビ取り剤のTVCMと同じ状況!ならば、スプレーするしかない!
黒いカビの根っこが、みるみる白くなっていくCGを脳内再生させながら、興奮。シュッシュッシュッシュッー!
実は、この写真。お客様が既に「カビ取り剤」で頑張られた後の状況なのです。
「そりゃあ、そんなにうまくいくはずありませんよね…どうか、お願いします…」と、お客様。
一般の方が装備されている「お風呂掃除」の最終兵器といえば「カビキラー」などの塩素系カビ取り剤ではないでしょうか。お風呂用洗剤で取れなければ、うん、これは強力な汚れだからカビキラーだな。と判断される方が多いようです。
しかし、ちょっとお待ちください。
この浴室のドアの汚れは、カビというよりも水垢なのです。水道水が残ってカビる。カビの上に水道水が乗って乾燥する。そこにまたカビが…というように、水道水の中に含まれているミネラルとカビと、その他もろもろの汚れがカッチリ固く混ざり合い、こびりついているのです。
生活の中で出来た汚れは、Aの物質だからaの薬剤で中和、Bの成分はbで無効化できる、というようなシンプルな考えでは決して解決できません。モジャモジャと複雑に入り組んでいる。だから、生活の様子から推理したり、経験から予測したり。化学的考察がなければ、ビクともこないと思います。
「塩素」で「カビ」は「死滅」する。研究所のシャーレの中で培養されたカビは完全にノックアウトできる。TVCMは100%正しい。でも、あなたの家のお風呂場の、その目の前の黒っぽいソレには、どうか分かりません。
話を戻して!塩素系のカビ取り剤は、水垢にはほとんど効果が期待できません。
ほとんど、と申し上げたのは、水垢の隙間から覗いている表面上の「ネトネト系」「カビ系」には効くためです。カビキラーを使うと、ほんのちょっと薄くなるのは、そういうことです。水垢の内側に抱き込まれたカビの色素やカリカリに硬い白い水垢は、依然残るはずです。
そして!カビキラーをガンガン日常的に使うと、むしろ汚れやすくなるのはご存知でしょうか。
水垢にほどよくブレンドされていた「ネトネト・ブヨブヨ」っぽい汚れがカビ取り剤で抜け落ちて、カリッカリに石みたい、それこそ純粋な金属に近づくような形になっていくのですね。
「ザ・水垢」っちゅうか、エリート水垢っちゅうか、いかなウォッシュテックでも完全には取りきれないレベルに強固な水垢に育っちゃうのです。
水垢は、ご存じのとおり、白っぽいマットな質感をしています。卵の殻みたいな粉っぽい質感があります。艶が無い。つまり、凸凹。
もちろん、樹脂や塗装にもダメージは大きいです。塩素系カビ取り剤を使い続けたユニットバスがパッサパサになるのは、表面が焼けただれ、脆くスカスカになっているためです。つまり、凹凸。
表面に作られた凹凸を足掛かりにして、さまざまな汚れが引っ掛かり、積もる。更に大きな凹凸が出来て、そこにまた、積もる。積もる。ですから、より早くより強く汚れやすくなる傾向が見られます。
きれいにしたいと思ってバシバシカビ取り剤を使っている。なのに、よけいに汚れは深刻に。衛生的に保つためにしていることが、むしろ衛生的に保ちにくい状況を作っている。なんと悲しいことだろう。現場で何度もそのように思うことがあり、今回、書いてみました。
特殊な洗剤を何種類も段階的に使い、白く。おそらくカビに悩まれて戦っておられたのでしょう、ちょっとドアの枠の白い塗装が、粉っぽくパサついて、艶がありません。うぅ、もうちょっと早くお伺いしたかった!
スリットにも、水垢がビッチリ。竹製の薄いヘラなどを駆使して固い水垢とカビを物理的に除き、洗剤で和らげて、ブラッシングして、スカッと風が通るようになりました。
換気効率がアップ!湿気や熱気が早く抜けるようになり、浴室全体のカビも軽減するはずです。
今日のポイント。
・浴室の扉にビッチリの黒カビの実態は、カビだけではなく水垢の性質が強い。
・水垢に対して、カビ取り剤は、ほぼ効果が見られない。
・カビ取り剤の常用は、リスクを伴う。健康へのリスクではなく、資産維持や衛生管理の意味合いで。