マンション共有部の「外階段」「ベランダ」「廊下」の床に貼られている樹脂製のシート。業界の通り名は、「長尺シート」。床に貼られる前は、ロール状に巻かれた長〜いシートであるためです。
数年後には、たいていこのように黒ずみます。排気ガスなど油性のベタベタした黒い汚れです。交通量がハンパでない首都圏においては、閑静な住宅地のマンションやアパートであっても、避けることができない汚れです。
雨に濡れると、滑り止めのエンボス模様がよりクッキリ。黒で模様をなぞったみたいに汚れが目立ちます。
※写真右端、ちょっと汚れのないところがありますが、詳細は後ほど…。
マンションにお住まいの方ならば、トライされたことがあるかもしれません。ベランダの汚れをナンとかしたくて、濡らしてマジックリンやマイペットなどの洗剤を撒いて、デッキブラシで擦ってみる。泥汚れやカビっぽい分厚い汚れは取れたけど、やっぱしスッキリしない…。
だいたいの清掃業者も、同様です。業務用清掃用品店で廉価に売っているブラシを取り付けてポリッシャーを回しても、だいたいの汚れはコレでやっつけているというアルカリ性の洗剤を撒いても、スッキリしない。
それが、長尺シートの汚れ!
賃貸マンションのオーナーさんなど、「なんで定期的にクリーニングの業者を入れているのに汚いのかしら。客点けのとき、イメージが悪いわぁ…」と悩まれていることが多いようです。
マンションに住まう方は、お洗濯などで窓からベランダに出られるたびに、「き…汚い。暗い。不衛生だよぉぉ。大型改修って何年後?それまでガマンせねばならないの?」と、どんよりな気分に。
そんな罪深いシート。クリーニング後は、このように。
スカッとさわやか!
スマホで撮るとピントがボケる!そのくらいにエンボス模様が見えなくなりました。
細かなエンボスの凹凸にフィットさせられるような繊細なブラシで洗い(ですからもちろんシートを傷つけたり削り落とすこともありません)、塩ビを傷めないようマイルドな洗剤を使い、歩行や排水に支障をきたすと問題になるので泡ブクブクの洗剤やパワフルな高圧洗浄機の使用は一切なし。他の清掃業者と同じ方法では取れない。ならば、作業の全てを見直し変えれば取れる。
この汚れは酸性であるため、長期に亘り付着すると、樹脂をパサパサのモロモロに劣化させてしまいます。
ラフに使って貼り直せばいいじゃん。と思いきや、長尺シートの張り替え工事は、ものすごーく大変です。力づくでシートを剥がし、それでも取れないところは強力な薬剤で溶かしたりして取り去って、下地を均して、新しいシートを接着しなければなりません。適当に工事すれば、フガフガに浮かんできたり、端っこが剥がれてきたり。屋外の足元ですから、これは危険。しかも隙間に水が入り込むと鉄筋コンクリートの寿命も縮まります。
きっちりと施工し、適正なメンテナンスで長く使う。マンションの資産管理として非常に有効です。
何より。おどろおどろしく黒ずんだ床のマンションは、「守られていない」「高く見えない」「品格が低そう」というネガティブな印象を強くしてしまいます。マンションを資産として捉えるならば、甘く見てはいけないところだと思います。
この物件では大きな機械を取り回すことができないので、一段一段、手作業で洗っていきます。下から順に、しゃがみこみながら段の一番上まで洗って、「あ、これ、写真を撮っておこう」と思いつき、そこでパチリ。なので、こんなふうにクッキリとビフォアアフターな写真になりました。