世間では「プロの」掃除、「プロの」ハウスクリーニングという表現が多く見られます。
たとえば「プロだから安心」「プロだから技術がある」「プロにおまかせ」など、何らかの確証・担保の符号のように使われています。
ここでの「プロ」とは、「職種」「稼業」という意味合いで使われていると思われます。
「稼業」ですから、名刺に刷っちゃえば、フランチャイズに属せば、もうその日から「プロ」を名乗って仕事を請けても支障ない。例えば、シンガーソングライターやイラストレーターと同じく、「プロ」だからといって一定の技量を保証するものではありません。
ですから、まず今までの「プロ」の概念は、そこいらへんに置いておいてください。
今回は、「プロだからとあったのに期待はずれ」「プロなのに何ということだ」のような悲しい誤解を引き起こさないために、正しい「プロ」を解説してみます。
ご存知でしょうか、ハウスクリーニングにおける「プロ」という言葉。「ハウスクリーニングでメシを喰っている」のような意味合いとは別に、もう一つあるんです。
ハウスクリーニングという業務には、種別があります。大きく分けて3つです。
1.メイド(家事代行)
1〜3日おき、日常的に行われる清掃。拭き掃き掃除が中心。いわゆる「主婦」による掃除を代わって引き受けるサービス。
経験度が低いパートタイマーでも一定の結果が出せるよう、道具や洗剤は非常に簡易なもので、「間違い」が起こらないようあえて低スペックになっている。従って、洗剤類の使用量、ごく少ない数種類に留まる。
※下記「2.ジャニトリアル」と統合して分類されることも多いですが、分けた方がイメージしやすいので、この表現で。
2.ジャニトリアル
ジャニターとは「管理人」を意味する英語です。したがって「ジャニトリアル」は住居などの管理業務を指します。
2週間〜3カ月程度に1度、定期的に行われる清掃。日常的な清掃では対応できない「メイド」サービスと比較して、もう少し深度のある作業を行う。
上記の通り、2週間〜3カ月程度に1度、定期的に行われる清掃を前提とした「業務用」の洗剤および道具を使用する。
メイド同様、人種、学歴、世代を問わず間違いなく作業に当たれるよう、洗剤の希釈度合いは50倍程度までとし、用途を商品名で表現するなど、分かりやすい設計になっている。すぐにわかる強さで着色料や香料を使うことも、誤使用を避けるために重要と言える。
ジャニトリアル用洗剤および機材の世界的市場規模は、下記「3.プロフェッショナル」とは比較にならないほど巨大である。
現在の日本で販売されている「業務用」の製品のほとんど全てが、ジャニトリアルを対象としている。
そのため、日本では、ほぼ全てのハウスクリーニング業者が「ジャニトリアル」に属す。
3.プロフェッショナル
1〜2年に1度、定期的に行われる清掃。メイドおよびジャニトリアルでは対応が難しい作業を行う。
1〜2年単位の厳しい汚れに対しても安全に対応することが求められるため、より高品質な環境性能および安全基準を満たす洗剤、専門性が高い機器を多種織り交ぜて使用する必要がある。
洗剤の多くは無着色無香料、希釈濃度も原液から数百倍希釈となるため、取扱いが難しい。(危険物だから難しいという意味ではない。)
ダメージリスクが高い困難な現場においても一定の結果を出さねばならないため、機材の構造や複雑な洗剤の使用方法を習得し、建材部材の特性や汚れの組成を正しく知り、柔軟に対応できる技能が不可欠となる。
基本的に、2年以上放置された汚れについては該当する洗剤も機材も設定されていない。したがって、これを越える時期放置された汚れについては、クリーニングの範疇では対応不可となる。
クリーニングの範疇を超える汚れについては、なぜ対応不可であるかを正しく伝え、なおかつスムーズに改修工事(リフォーム)に引き継ぐための知識も備える必要がある。
※ウォッシュテックは、プロフェッショナルに属します。
上記1,2,3の分類、しっかりと認識されましたか。そのうえで選ばれれば「え、プロなのに?」というガッカリは劇的に少なくなるかと思います。
ハウスクリーニング業者を選ばれるうえでは、依頼主の希望内容とのミスマッチを避けることが最も重要です。
メイド業者にジャニトリアル業者にしか対応できない汚れを任せても取れるはずがなく、プロ業者にメイドの仕事をさせると気が効かないし何せ割高です。
また、10年以上何も手を入れなかった汚れに対してプロ業者を投入しても、「壊れてしまうかもしれませんから、しっかり洗えません。交換してください」と言われます。
例えば、これがミスマッチ。ミスマッチな業者に依頼すると、満足な結果には絶対に至れません。
始めにも書かせて頂いた通り、どのハウスクリーニング業者も、「汚れが落ちる!」と豪語しています。料金も似たり寄ったり、探せば探すほど迷うかもしれません。
ハウスクリーニングを頼むとすれば、何を望み、何を任せたいのか…まずは自分との対話が必要です。The Choice Is Yours。あなたが、あなたの責任で選んで、決めるのです。
最も分かりづらいと思われるのは、「メイド(家事代行)」以外かもしれません。ジャニトリアルとプロフェッショナルの違いを明確に宣言しているハウスクリーニング業者は、日本ではほぼ見当たりません。
しかし、ここが重要。分類のお勉強よりも、大事なことは何でしょう。悩みの汚れがどうなるのか、でしょう。
ジャニトリアルの洗剤や道具を用いるならば、数か月以上経過した汚れを解決することはできません。難しさとは引き換えに、汚れが落ちないように作られているのですから。
「ならば」と、手が焼けたり目に染みたりするような強い洗剤を何リットル使っても、落とすことはできません。汚れを取り去るのではなく、汚れが付着している素材そのものを焼いて溶かすことなり、むしろ取り返しのつかない損傷を与えることになります。
結果、手持ちの洗剤と道具では満足な結果を引き出せないことから、粗い道具で削り落として対応する傾向があります。
その時にはきれいになるかもしれませんが、より深く素材に傷を付け凹凸を刻んでしまうため、汚れが再付着しやすくなり、また、損傷や劣化にも直結します。
ハウスクリーニング業者自身も、自分が何を期待されているのか、何に属しているのか知らないのです。
作業時間が少ない、料金設定が安い、ゆえに削ってでも結果を出すのは正当なこと。自分の使っている洗剤や洗剤では落ちない、だから落ちないと言うのは仕方がない。そのように考えて「プロフェッショナル」のようになろうとするハウスクリーニング業者は、事実、少なくありません。
けっして技量がないからではなく、自分の役割を正しく捉えていないから、誤った着地になっているのだと思います。自分の役割を極めていけば何とかやっていけるところを、どこかでつい言い訳や誤魔化しやエエかっこしぃをしたくなる。つじつまを合わせるために強引なことをせねばならなくなる。
それが外から見ていると非常に怪しく分かりづらいのです。そして、ハウスクリーニングをしてみたい人たちをケムに巻いて惑わせることになる。
「お母さんのカレー」「洋食屋のカレー」「ホテルのカレー」どれも美味しい。どれも食べたいときがある。ホテルのカレーは格調高い。だとしても、それを作る調理人がセレブなわけじゃない。ゆえに羨むこともない。そのように振る舞う必要はない。それぞれの美味しさを追求すれば良し。ですが、ハウスクリーニング業界は依然混迷状態のままです。
ウォッシュテックは「プロフェッショナル」です。
作業に使用する洗剤・機材、全ての道具は、一般の方にお教えすると驚かれるような価格ですし、いきなりポンと渡されても使い方も何も分からないものばかりです。
自分は、このようなハウスクリーニングをしています。だからこそ、この結果になります。その裏付けは、このような内容です。と、ご検討いただく方に向けて可能な限り正確にお伝えするように努めています。
「自分は何ものか」ハウスクリーニング業者が正しく語り、正しく受け止められることがスタンダードになれば、キレイで気持ち良い住まいが増えると思うんだなぁ。キレイで気持ちいい家に長くいるって、それだけで人生だいぶん幸せだと思うんだなぁ。
いつもより小難しい長文にお付き合い頂きましてありがとうございました。でも、これを最後まで読まれた方は、きっとヘンテコなことにならないと思います。