横浜市港北区の戸建住宅にて、浴室クリーニング。在来工法、壁面は陶製のタイルです。
全体に膜が張ったように光沢が無く、薄く灰色のようなベージュ色のようなくすんだ色に見えます。乾くとサラサラと卵の殻のような感触、濡れた状態ではヌルヌルと感じます。
「お風呂用洗剤のTVCMでやってるでしょう。洗剤をスプレーしてスポンジで洗って、シャワーの水を掛けたら、キラーン!ピカピカーって。絶対あんなふうにならないんです。頑張っても、毎日やっても、ちっともきれいになりません。」と、お客様。
なるほど、実はTVCMでやるようなドラッグストアで市販されている洗剤は、浴室の汚れのほんの一部、それも軽度の汚れしか対応していません。主に金属石鹸や石鹸カスと呼ばれる油っこい白っぽい汚れ。それも厚く蓄積された場合には市販の洗剤ではビクともしないかと思います。しかし、どこでも流通させられて、誰でも買えるくらい安く、事故なく使えるもの、となれば致し方ないことです。
そこで強力な武器として登場するのはカビ取り剤かと思います。しかし、カビ取り剤を浴びせまくると、この曇りはますます固く強靭になってゆきます。また、樹脂や塗装部分を劣化させ、表面が脆くなったり粉っぽく崩したりする原因になります。
浴室の汚れは、多種多様に入り混じっています。何回にも分けて工程を踏んで、面倒でも着実に的確に作用させていってようやく「おお!」という驚きに辿り着けるもの。しかし、一般的に日常のお風呂掃除で使われる洗剤は、たいていは中性のお風呂掃除用洗剤と、これまたアルカリ性のカビ取り剤。武器は2つのみ。しかも、何がどう効いているのか分からないまま使われている。すっきり落ちるはずはありません。
マジックリン、ルック。そしてカビキラー。しかしそれでは解決できない…。そこで、ご家庭のお掃除においては、さらにもう2つ武器を足されることが多いかと思います。
ひとつは硬いブラシ。あるいは研磨材入りのタワシ。これで、洗剤で落としきれなかった目地の黒カビや蛇口にこびりついた白いモヤモヤを削り落とします。目地は硬いブラシよりは柔らかいのでえぐれて凹んでしまいます。黒カビがある目地は簡単に削り落とされるので黒カビは見えなくなりますが、この方法ではタイルの角が立ってきたり、目地が細く弱ってしまって割れたり欠けたり。いけません。もちろんメッキも傷だらけになります。
もうひとつには、メラミンスポンジ。これで、タイルや樹脂の表面を磨きます。しかしながら、メラミンスポンジは、けっこうな研削力があります。もしかしたら表面を覆った白い曇りが薄くなるかもしれませんが、目には見えないレベルで粗く削り落としているので、表面は凹凸になってしまいます。しばらく後、その凹凸に引っ掛かる形で汚れが再度ついたら、滑らかな状況に付着した時よりも非常に頑固になります。私どもにも、もはや手の施しようがない状況に近づきます。これも、いけません。
さっきからダメダメってよう!なんだよう!と、お怒りになるかもしれません。しかし、出来る出来る、やれるやれる、と思われているお掃除方法の方が、「ゴシゴシ、えいやえいや、こんにゃろこんにゃろ」と、強引になってしまいます。対応していない汚れにムリにアプローチして結果を出そうとするわけですから。そして「アイツ(業者)に出来て、アタシに出来ないワケがないでしょうが!」と、どうしても力が入ります。その結果、ダメージが深く、劣化が早く、早い周期で高額なリフォームをされることになる、それは長い目で見て大変な損をされているなぁ、というのが私の所見です。
ご自身でされるお掃除では、きれいにならないこと、ないですか。「そんなことないわよ、うちはキレイよ」と仰る方もいらっしゃるかもしれません。しかし実状、むしろそう仰る方の浴室は傷が多くて、樹脂がボロボロになっていて、私どもにもどうにも手の施しようが無い状況になっていることも多いものです。
「うん、実のところ、きれいごとはヌキにして、正直、うまくいってない」と、お悩みの方。ほとんどの方がそうかと思います。どうか、そこで負けん気を出さないで頂きたいのです。私どもが一つの浴室に使用する洗剤や機械、高くて買えないし難しくて使えないはずです。
ゆえに同じ結果になるはずがなく、であれば、ハウスクリーニングは贅沢ではないのです。
日常のお掃除(ハウスキーピング)とハウスクリーニングは、同じ部類ではありません。異なる両輪がバランスよく走って、ようやく家は気持ち良く長持ちする。私はそう信じます。
「ハウスクリーニング?ありゃあセレブのやるもんだろ?無駄遣い。お前、主婦だろ?女だろ?なんで出来ないの?時間あるだろ?」などと旦那さんに反対されたら、この記事をプリントアウトして、おでこに貼ってください。
かくして、浴室クリーニング、完了。
淡いピンクと、淡いブルーのデザイン貼りタイルが可愛らしく仕上がりました。今まで一切なにも映り込んでいなかったタイルに、窓や照明がはっきりと見えています。もちろん、触るとキュッ、ムチッと指が気持ち良い。黒くカビていた目地、これも幸いなことにスッキリと白く。
なお、ウォッシュテックは、上にも書いた通りの理由から、目地を固いブラシや粗いタワシで削り落とす行為はいたしません。そして、目地を破壊してでも黒カビを除去して欲しいと仰るお客様は、ウォッシュテックでは非常に稀です。なので、場合によっては薄く黒い色素だけが残ることがあるのです。(もちろん、深く浸透した色素だけ。表面にあるカビの機能は完全に死にます。)何卒ご了承ください。